日本福祉文化学会

国際セミナー


第5回東北アジア福祉文化国際セミナーin韓国

日時:2005年8月5日(水)〜8日(月)
場所:韓国 水原市霊通綜合社会福祉館 



開会あいさつ
韓国福祉文化学会会長 金 聖二

東北アジア福祉文化国際セミナーが韓国で開催できることを光栄に思っています。日本・モンゴルからお越しの皆さんを心から歓迎します。現在の韓国では、福祉従事者の雇用の拡大による、ソーシャルワーカーの専門性と制度化が大きな関心事です。参集の皆さんとともに東北アジアの福祉文化を大いに語り合いたいと思っています。

日本福祉文化学会会長 一番ヶ瀬康子

韓国で2回目の福祉文化学会の国際セミナーが開催されることを心から喜んでいます。私たちは現場に根ざし、地に足の着いた福祉を東北アジアの各国で展開したいと希求している。今回のセミナーの開催にあたり、ご尽力いただいた韓国福祉文化学会の皆様に厚く御礼申し上げます。   

 韓国国際セミナー 民族舞踊

 

研究発表

日本のしょうがいしゃ福祉の実態と課題 ―2つのキーワードを拠り所に―

2つのキーワードとは「ノーマライゼーション」と「コミュニティ」である。しょうがい者福祉を両キーワードで照らし合わせると「ノーマルな生活環境の提供」「ほかの人々と同様な立場」「居宅においてのケア」と言う表現が導かれる。しかし日本の施設においては、人権侵害が罷りと通っていることが報告されている。脱施設化の進む中、報告者は日本の2036施設(知的障害者更正、授産、通勤寮等)で調査を実施した。その結果、地域移行の受入先はグループホームが44%を占めるが、グループホームもまた管理され、施設のミニ化に過ぎないことが明らかになった。本来のコミュニティケアとは程遠く、現行の地域移行の問題があることが指摘された。当事者本人たちの切実な願いを阻んでいる環境的・組織的・個人的な側面へのチャレンジを行う必要がある

韓国における廃鉱地域障害者の問題と課題

発表者:洪 金子(東京福祉大学院社会福祉学部)

太白市は韓国を代表する炭鉱地域として繁栄してきたが、1989年以降炭鉱の閉山により地域経済が危機状態となっているとともに産業障害者の問題が表面化している。今回はカナダ・ビクトリア大学のブラウン教授が考案した障害者とその家族の生活を国際比較する調査として、米・加・豪・蘭・日・韓など7ヵ国の一環として実施した。その結果太白市では、じん肺等の健康問題、失業、地盤沈下等の環境問題、絶望感等の精神的問題、家族の負担増大が顕著であった。そして課題として、@所得確保、職業訓練 A家族へのケア B医療 C福祉情報 D余暇 E社会参加が指摘された。 

モンゴルの福祉と福祉文化 

発表者:Munkh gal Nyaman

モンゴルは1990年に社会主義から市場経済に移った。身体障害者の現状は後天的障害者が増加しているが道路や住宅のインフラ整備が未整備な上、社会的理解も不十分である。発表者はモンゴルサーカスのTsogtsetsegさんの事例を紹介した。彼女は空中ブランコの名手であったが1982年25歳の時、練習中に転落し下半身麻痺となった。その後、犬の調教師として世界各地で公演している。モンゴルの障害者福祉の課題として、@医療とリハビリの充実 A建築基準の改正 B統合教育の実施を指摘した。また、発表者自身は通訳を通じて福祉文化に接し、今後福祉研究者としての決意を表明した。

福祉文化とは何か? ―日本福祉文化学会における討議過程と定義化― 

発表者:馬場 清(浦和大学・日本福祉文化学会事務局長)

福祉文化の定義は一番ヶ瀬康子の1990年発行の『福祉文化』No.2 、河東田博の『障害者と福祉文化』2001年 から引用されることが多い。しかし学会としての定義はなく曖昧さを残している。そこで2002年に研究企画委員会を設置し、事例収集とその分析を進めた。その結果、基本理念として「すべての人がその人らしいかけがえのない人生を送ることが出来るような社会の実現をめざす思想」とまとめた。そのために必要な条件として@従来の福祉観を転換させ福祉の文化化を進めること Aその過程において文化のあり方を転換させる文化の福祉化を進めることの2つを掲げた。

不便とはいえ、不幸になる必要はない 

発表者:安 香林(水原女子大学社会福祉科)

人間の生活の究極的な目的は幸福になることであろう。韓国戦争が終わった当時の韓国国民の関心事は衣食住の解決であった。しかし今日では高カロリーな食物は避け、高質のたんぱく質やビタミンを含む新鮮な野菜などがウェルビーイングメニューとされている。福祉に文化が兼備される時、たとえ不便であっても幸福になれるのである。人を理解するためには、その人の文化を理解しなければならない。西洋人は心を構造と理解しDoingに焦点を置くが、東洋人は心を存在として把握しbeingに焦点を置く。福祉を一段高め、文化の枠として認識するのが福祉文化であろう。

 

視覚障害者の文化活動とその支援

発表者:岡 真澄(埼玉県立盲学校)

視覚障害者にとって視覚芸術の鑑賞は諦めざるを得なかった。しかし視覚障害者自身は、視覚芸術への関心が高いことが発表者の調査から明らかになっている。絶望感の中にある失明者が、趣味や文化活動を手がかりに新たな社会復帰への意欲を取り戻す事例は少なくない。社会のビジュアル化が進む中、視覚障害者への芸術を保障することは「文化の不平等の解消」「芸術のバリアフリーの実現」にほかならない。発表者は美術館、映画館等での視覚障害者への支援を調査し、手でみる彫刻展や音声ガイド付き映画などの実践が確認されたが、芸術のノーマライゼーションのための課題もまた挙げられている。

 

昔話に現れる障害者福祉と物語文化 ―ペロの「汚れた撥ね髪リッケ」―

発表者:金 貞蘭(建国大学校ヨーロッパ語文学部)

「汚れた撥ね髪リッケ」はフランス人作家ペロ(Perrault)の物語である。生まれつきの障害で外形が醜い男性主人公リッケと外形は美しいが知的障害の王女の物語である。発表者は外貌・性格と行動・愛の条件・結婚の条件などについて分析し、障害者福祉と物語の文化について考察している。この物語が福祉文化に与えるメッセージとして、外貌と異なる内面の美しさ直通を見抜く力、自分の能力を誇示するよりも相手の潜在能力を目覚めさせることの重要性を指摘した。さらに物質的なことの供給も重要であるが精神的霊的文化の導入も必要であると結論つけた。

介護福祉教育と福祉文化の構築 ―時間軸教育としての介護実習巡回指導を通して―発表者:石井孝子(東京家政学院大学)

 

発表者は、介護福祉の専門識者を養成していく前提を学生の持つ個文化を育てること位置付け、講義の進め方にオルタナティブの視点を取り入れた。その結果自分の考えを表現でき、「今ここで(NowHere)」を主張できる能力が養えた。座学から演習へ、演習から実技指導へ、実習指導へ、介護施設実習へと段階を追って学生の潜在能力を高めてゆく。こうした現場主義教育に基づく時間軸教育の実践により、ミクロの個介護文化からマクロな福祉文化への構築につながったとの報告であった。

 

韓国の高齢社会の到来と福祉文化

発表者:李 海英(水原科学大学社会福祉科)

現在韓国の高齢化率は、2000年に7%を超え、2018年には14%を超えると予測され、世界に例のない速さで高齢化が進行している。最も印象的だったのは、高齢者の自殺者が諸外国と比べ群を抜いて高いことであった。伝統的な儒教の国でありながら、家族関係と老人扶養の意識が急速に変化しているのであった。この対策として各地に老人福祉会館や敬老堂などが設置され、専門家による余暇活動のプログラムが開発されている。

 ここでの主な福祉文化活動のメニューは、ヨガ、カラオケ、伝統音楽遊び、ゲートボール、地域へのボランティア活動などである。

養護学校と福祉文化 ―作業学習の事例を通して―

発表者:塩田公子(青葉学園短期大学)

 障害を持つ児童生徒が、就労を通じて社会的に自立させることが特殊教育の大切な指導の一つである、養護学校の高等部では職業に関する専門科目を設けている学校もある。養護学校の作業学習に地域の文化を生かした産業を取り入れることは、卒業後に地場産業を支える人材として就労することも可能となる。実際に地域の産業との連携の成功例として岐阜市立岐阜養護学校の陶芸がある。駅念に入れる焼き物の箸置きを製作して好評を得ている。これらの商品は福祉文化として地域に貢献し、活性化につながっている。

大会セレモニー

鐘と太鼓の演奏(虹の教室の児童たち)    韓国舞踊(金 英実ほか)

フルート演奏(岡 真澄)

視察

水原華城、韓国文化村を視察し、来蘇寺では1泊のテンプルステイを体験した。



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