日本福祉文化学会

第24回 日本福祉文化学会全国大会東京大会

第24回 日本福祉文化学会全国大会東京大会報告 
 
 日本福祉文化学会全国大会が終了!

大会の全体総括  大会実行委員長:島田治子

 9月28日、29日開催の第24回日本福祉文化学会全国大会東京大会は、無事、終了いたしました。1日目は108名、2日目は90名のご参加をいただき、登壇者・たくさんのボランティアの方々を含め、すべての参加者に御礼を申し上げます。
 今大会では「暮らしの中の福祉文化を問い直す」というテーマを掲げました。震災・放射能汚染による被災の真っただ中にある福島県飯舘村・菅野典雄村長の「経済より命」という重い言葉に心を揺さぶられた参加者は、オペラ歌手・村山岳さんの歌声に癒され、福祉文化の一端を体感できたのではないでしょうか。
 5つの交流分科会と研究発表会、及び2つの委員会企画、そしてパネルディスカッションの登壇者も含めて、多種多様な立場、考え方、生き方の方々にお話しいただきました。聞き手もそれぞれ違う場所に住み、異なる価値観を持って暮らし、異なる問題や課題に直面しているので、多様な選択肢があったのは自分の暮らしを見つめ直す上でも、他者の暮らしの問題に気づく上でも、良かったのではないでしょうか。
 当日、書いていただいたアンケート結果を見ても、それらのことが裏付けられています。「勉強になった」「参加してよかった」と多くの方が高い評価をして下さいましたし、部屋移動をせずに討論するという新しい試みについても否定的なご意見はありませんでした。若干のご批判も、学会をさらに良くするためのご意見と受け取れる温かい内容で、皆様の学会に寄せる熱い思いを強く感じました。
 「暮らし」というテーマは、一見、平易なようでいて、実は最も難しいテーマであったのではないかと、しみじみ感じています。今大会だけで問い直しが全てできるものでも、答えが出るものでもありませんから、今後も引き続き、それぞれの場で考え続けていかなければならないでしょう。


基調報告
 基調報告では、東京大会実行委員会事務局長の馬場清より、第20回記念大会(東京大会)からの学会の軌跡を追いながら、本大会の位置づけ、開催趣旨が述べられた。
 その中ではまず、最近の福祉文化学会の状況を3つの「衝撃」があったとしてとらえた。その3つの「衝撃」とは、@第20回東京大会の「衝撃」(研究誌第20号参照)A2011年東日本大震災の「衝撃」(研究誌第21号参照)B一番ヶ瀬元会長のご逝去という「衝撃」(研究誌第22号参照)の3つである。
 こうした中、会員数の減少など、学会は大きな転換期を迎えているが、だからこそ今、もう一度福祉文化の魅力を会員間で再確認し、そのことを考え、実践し、交流する場としての学会の活動を進めていくべきことが強調された。
 そのために新体制では、委員会活動を中心に、様々なことに取り組んできている。将来構想委員会は、今後の福祉文化学会のあり方を答申にまとめ、現場セミナー、ブロック活動の活性化とともに、全国大会の活性化を唱っている。本東京大会は、そのモデル、指針となるべく、実行委員会を中心に、プログラムを考えてきた。また研究委員会では、「福祉文化よもやまゼミナール」を発足させ、定期的に議論を進めてきた。そしてその中間報告を本大会で行うことになっている。また企画委員会では、研究と実践の融合、地域文化を生かした福祉文化実践の2つのプログラムを本大会でも行い、福祉文化学会ならではの取組を進めてきている。
 このようなことをふまえ、本東京大会では、「暮らしの中の福祉文化を問い直す」をテーマに2日間、参加者の方々と議論を深められるようなプログラムを組み立てた。その根底には、「人々の暮らしは本当に豊かになったのか」という問いかけがある。地震、津波、放射能汚染といった災禍をもたらした東日本大震災、過疎、過密、不況、グローバル化、公害、環境破壊などなど外的要因によって暮らしは大きく変えられた。また障害への偏見、差別、徹底した経済合理主義、効率主義、競争原理など私たちの内面にある考え方も、暮らしを大きく変えてきた。
 だからこそ今、豊かな暮らしを取り戻すためにどうしたらいいのか、考える必要がある。そして東京大会のすべてのプログラムから、そのことを考える上での大切な視点を学ぶことができるし、そういう観点から2日間の大会を感じてもらいたい。
 一番ヶ瀬元会長はよく、福祉文化は人権文化と同義であると述べられていた。暮らしが破壊され、人権保障から遠ざけられている人びとにこそ光をあて、その豊かな暮らしの実現を人権のひとつとしてしっかりと位置づけ、それが獲得されていく過程を学びあい、共有し、自らの生き方や地域づくりに生かしていく。そんな大会になることを望んでいる。


特別講演 『までいライフ』で求めた豊かな暮らしの今を語る
 今から14年前、すばらしい地域づくりの実践から学ぶことをテーマに、福祉文化現場セミナーが行われた福島県飯舘村。その「までい」の村づくりが、放射能によって、破壊され、村民は今なお全村避難を強いられている。その村から、菅野典雄村長に来ていただき、「『までいライフ』で求めた豊かな暮らしの今を語る」をテーマに、話を聞いた。
 現代を、明治維新、敗戦に続く「第3の転換期」と考える菅野氏は、これからは「バランスの時代」であると主張する。そして効率一辺倒、「お金の世界」からの脱却をめざして、「ていねいに」「心をこめて」「手間暇惜しまず」といった意味の「までい」ということばを村づくりの基本に据えてきた。そして福祉文化学会としては、まさに現場セミナーにおいて、その村づくりのすばらしさを目の当たりにしてきたのである。
 しかし「3.11」は、「までいライフ」を目指したそれまでの村づくりを全面的に破壊した。そして菅野村長は、原発による被害は、他の災害とはまったく異なる質をもっていると主張する。それは住民の健康被害、環境破壊はもちろんのこと、人々のつながりを分断したことによる。
 だから今こそ、「バランス感覚」を磨き、まずは「ゼロ」、つまり「3.11」の前のレベルに向かって、不安と戦いながら、「いのちを大切にする暮らし」を目指してやっていかなければならないと話された。「数で数えられる豊かさ」はまさしく「足し算の暮らし」。つまりものをどれだけ増やすか、お金をどれだけ儲けられるかを大切にする。しかしこれからは「数で数えられない豊かさ」、つまり人々のつながりを大切にし、自分だけでなく他人を思いやり、みんながいきいきと楽しく過ごせる暮らしを「引き算」の考え方で実現していくべきであり、それこそが成熟社会の目指すべきところであると話された。
 話を聞いて、原発被害、全村避難というまったく想定されなかった事態においても、まったくぶれない村づくりの思想に感激した。もちろん一つ一つの場面での決断は難しく、大変で、様々なところからの非難や誹謗中傷は絶えることがなかったと思われるが、常にそこには「までい」の考え方を大切にするという「ものさし」があったような気がした。
 村は除染も進まず、現段階ではまったく帰村のめどが立っていない。しかし菅野村長の力強いことばを聞いて、これからも飯舘村の行く末をきちんと見守っていくことが大切であるとともに、その村づくりの哲学を私たちの暮らしの再構築にも役立てていくことが必要であると実感した。
 


特別公演「〜共に〜 被災地復興への願いを込めて」
 オペラ歌手村山岳氏は、特別公演の余韻(心地良さ)を胸に、翌日一人ウイーンに飛んだ。世界の人たちに音楽の心と被災地復興への願いを伝えるために。
 彼は、2011年3月11日以降、全国各地で行ってきた被災地支援チャリティコンサートの収益金約100万円を当学会に惜しげもなく寄付してくれた。その彼に、昨年春、被災地気仙沼に行く車中で再会した。再会時、いち早く今年の東京大会での特別公演を依頼した。その願いが叶い、彼を東京大会の特別ゲストとして招くことができた。
 特別公演で彼の歌声に聴き入った聴衆は、皆、酔いしれた。特別講演の福島県飯舘村菅野村長の話とマッチしただけでなく、彼の被災地復興への思いが伝わったからであろう。
 そのため、多くの聴衆が「感動し、涙が出て来た」という感想を寄せて下さった。
 音楽の心と被災地復興への願いを伝えるために、彼は今も世界各国を飛び回り、多くの人たちに彼の思いを届けていることだろう。
 


交流分科会
第1交流分科会「災害支援と福祉文化」
 福島県飯館村菅野典雄村長の特別講演を受けて、飯舘村高橋雅彦健康福祉課福祉係長と中井田多美子やまゆり保育所所長のお二人をパネリストに、原発爆発後の村から避難している村民の生活を伺うこと、そして、私たちに何ができるのかを目的に、分科会を行った。
 村長のいる打ち合わせの場では全く無口で一言もしゃべらなかった高橋係長が、本番では能弁で、避難した高齢者や障害者の実態をわかりやすく話してくれて、役場の職員の大変さがよくわかった。しかし、それは行政依存だなど、指定討論者岡村ヒロ子理事と藤原一秀会員からの質門、会場のみなさんの意見など、活発に交流ができた。当時の状況を描写した「避難弱者」(東洋経済)を勧めます。


第2交流分科会 「地域文化と福祉の創造」
 福祉と地域文化の融合を目指す分科会は、5回目を迎え、関東圏から3実践が寄せられた。
 1つ目は、わらべうたを通して、住民が独自の生活文化を掘り起こし、世代間交流で共有、伝承し、より強いコミュニティづくりを目指す活動。
 2つ目は、かつての奥会津の暮らしを、子どもたちがお年寄りから「聞き書き」し、地域の生活文化を浮かび上がらせることにより、奥会津文化を次の世代へつなぐ活動。
 最後に、東京の妙正寺川流域での染色業を復活させ、染色関連業と商店会、町会という既存の組織と住民をつなぎ直し、新しい形の共同体を築く活動。
 いずれも、地域の文化を掘り起こし、今の時代に合う形での活用を目指す、すぐれた実践であった。


第3交流分科会「楽しみの福祉文化」
会場いっぱいの参加者で熱気あふれる会となり、福祉現場での「楽しみ」や「遊び」の現実とあるべき方向を考えた。「盛り上がるレク」だけでいいのか、ただの遊びになっていないかという高橋紀子氏の問題提起から入り、楽しみどころでない現場の厳しい状況が中野ひとみ氏から語られた。「楽しんでこそ人が変わって行く」という方向で議論が進み、松沼記代氏はレクリエーションを介護のシステムに入れることの必要性を主張し、佐藤喜成氏は「権利としてのレク」の視点を打ち出した。フロアからもレクやアクティビティの定着と拡大を図ることの大切さが交々語られ、効果を明確にしてエビデンスを発信することや専門職の確立を目指すことなどが確認された。


第4交流分科会「ユニバーサルデザインと人々の暮らし―高齢者や障がいを持つ人たちも満足する衣服に近づくために―」
講師 渡辺聰子(山野美容芸術短期大学名誉教授 株式会社リラ・ヴォーグ代表取締役)コーディネーター 森山政与志(一級建築士 新潟医療福祉大学・非常勤講師)・塩田公子(大宮ろう学園教諭) 高齢者・障がい者とともに生活を含めた衣服について考え、2年前に会社を設立し、新しいファッションスタイルを提案している渡辺氏のお話を伺いながら、製作した服を見せていただいた。講演後、衣服を実践的に考えるために、意見交換の場を設けた。参加者全員から質問や意見等があり、具体的な内容が積極的に話合われた。

第5交流分科会 「マイノリティと現代社会」

 第5交流分科会では、小沼一弥さん(株式会社サンユー湘南寮)、冨田祐さん(社会福祉法人創プロップ)、相田あづささん(社会福祉法人皆の郷第3いもの子作業所)の3人の知的障害を持つ当事者の方々に、会社や作業所で「働く」ことへの思いを語っていただいた。また、当事者の方には報告をしていただくだけでなく、司会進行役もつとめていただいたため、仲間同士の丁々発止のやりとりがなされながら、分科会は進んでいった。
 3人の報告者の方からは、仕事の話のみならず、趣味や本人活動のこと、社会や周囲に対する要望、大切にしていることなど、幅広い報告がなされ、「働く」ことは「暮らし」の一部として他の要素と切り離して考えることはできないことがあらためて浮かび上がってきた。
 会場からは多くの質問が寄せられたが、質疑応答からはみんながやさしい社会になってほしいという思いや、自分で使える空間や時間をもちたい、自由に暮らしていきたいという思いが述べられ、障害の有無にかかわらず、生きやすい社会や望ましい暮らし方には共通する事柄が多いことが確認された。
 よい職員とはどのような職員か、という質問に対して、報告者の一人からは「そんなことは自分で考えることであり、いちいち答えを求めるからおかしいことになるのだ」という一言が返された。この返答からは、「障害者」も「健常者」も自分がどのようになっていきたいのか相手におもねるのではなく、自分自身で試行錯誤しながら進んでいかなければならないことが示されており、会場の参加者に対して大きな宿題が投げかけられたように感じた。


総会 2014年度 日本福祉文化学会事業方針
1.福祉文化研究の新たな展開
2.ブロック活動・委員会の組織的運営と会員参加活動の促進
3.災害支援のための研究および実践活動の継続的推進
4.福祉文化現場セミナーの継続と充実
5.国際交流福祉文化活動の取り組みの強化
  留学生会員や昨年関係した交流セミナーの継続的取り組みによる交流の強化促進
6.新役員体制へのすみやかな移行と新企画への意欲的な取り組み
7.全国大会・会員総会の開催と内容の充実
 第25回全国大会別府大会の開催 
 2014年10月4日(土)5日(日) 会場:別府市・泰生の里
 以上の事業を支える予算は総額431万円余。現在の会員数は356名団体会員10団体。
 学会のすべての活動は会員の皆さまからの会費で支えられています。会費の納入にご協力下さい。



研究発表

政策・法律と福祉文化
 第3分科会では、3人の発表者から、制度や政策について、内容が異なるそれぞれの分野から問題提起がなされました。
 最初の草薙眞由美さんの「介護福祉士候補者と日本社会」では、経済連携協定(EPA)によるインドネシアやフィリッピン、ベトナムからの介護福祉士候補者について、これまでの経緯や介護福祉士試験の合格者の35人中の11人が帰国している現状などについて説明、これまでに公開されている情報の分析ならびにインドネシアの候補者に対するアンケートの結果の分析を発表、さらに「公的機関による支援だけでなく周囲の者の配慮が重要」と問題提起がありました。
 次の李京真さんの「性売買防止法と自立支援政策における現状と課題〜韓国と日本の政策比較を中心に〜」では、韓国も日本も「売買春問題は個人・倫理的な問題」としている点では共通しているものの、売買春に対する取り組みの方向性や自立支援システムなどが異なっていることを説明、日本について「(当事者が)行政処分の対象者として扱われる限り当事者支援には限界がある。」と指摘、根本的には国民全体の意識の醸成が必要であることなどの問題提起がありました。
最後の斎藤史夫さんの「子どもの福祉文化と児童館−児童福祉の理念と『児童館ガイドライン』−」では、“すべての子ども”という児童憲章や児童福祉法の理念の実践現場である児童遊園や児童館の減少傾向についての危惧、2011年に策定された「児童館ガイドライン」への期待、さらに放課後対策がややもすると学校中心主義の傾向が強められていることなどの問題点を指摘、「地域の福祉化」「福祉の文化化」などの福祉文化の視点からの問題提起がありました。
 以上の3人の発表者の発表の後で、会場に参加している方々も含めた討議会に入りましたが、それぞれの発表の分野が異なることもあって、介護福祉士候補者についての現状、韓国も日本の売買春問題の現状、児童館の現状などをさらに理解するための質問が多くなり、残念ながら論議を深めるまでにはなりませんでした。
 3人の発表者の発表を拝聴して、さらに参加者の皆さんのお話をおうかがいして、結局は、法律や制度、政策などが整備されたとしても、社会の福祉文化の基盤がなければ、結局は法律や制度、政策などが有効に生きないことを、強く感じさせられました。

医療と福祉文化
 第5分科会では、1人の発表者が2つの演題を行うという形になった。端的に発表を示すと、前段の発表は「がん患者と医療ソーシャルワーカーの関わり」であり、後段の発表は「尊厳死の倫理」についてであった。
 前段に関しても、人間の死について論じられ、後段は尊厳死という領域から、いずれについても人間の死を深く考えさせられる分科会となった。
 その中で、会場の雰囲気を論じるのであれば、発表者であった宮原和沙会員(医療法人社団天馬会半田中央病院)の発表は、研究目的、研究方法や研究倫理に適切に対応されており、学術性が高かった発表である。それと同時に、会場の参加者も宮原会員の発表に聞き入っていたといったことで、第5文化会場が一体感を持っていたと振り返りたい。特に、後段の発表に関しては「尊厳死」を対象としたことから、座長の独断で大変恐縮であるが、この分科会に参加した全ての人(参加者およびスタッフ)に意見や感想を聞くことができた。なお、この意見交換の際に、結論を導くことはできなかった。
 死という、自らは経験することができても、体験し、状況を報告することができない領域に関して、医療はどのように向き合うのか、福祉および福祉文化としてどのように捉えていけばよいのか、結論が出せない状況であった。おそらく、当該問題に関しては、学術会議といった組織として結論は出せない状況であるし、仮に個人であっても、生と死の問題に関して悟りの境地に達することは、難しい状況といえる。医療や哲学、宗教といった領域を重ね合わせても、本質的な解決は迎えられない。
 学会本部から第5分科会の様子を示すように依頼をされたが、正直なところ、どのようにまとめてよいのかが分からない状況である。今ここで示すことができるのは、「生を受けた以上、目標を持って生きる」ということである。



委員会企画
1.実践と研究の融合
 これまでのこのセッションでは、実践家と研究者がそれぞれのテーマで発表頂き、別々の議論をしてきました。今回は初めて、共通テーマを掲げ実践家と研究者双方の視点から発表してもらい会場全体で議論を進めてみました。
「職員の質」という福祉サービスの根幹となるテーマを「八王子平和の家」の川村氏からは、職員を育てる上での組織のあり方について示唆がありました。石井バークマン氏からは、職員研修の意義やあり方についてスウェーデンでの経験やデータをもとに説明下さいました。お二人の発表と議論から実践に根差した具体的な視点の重みと、データの蓄積の重要さを私達につきつけて頂いたと思います。今後もこのような共通テーマを持ってさらに実践と研究が融合できるよう深めていけたらと思います。

2.福祉文化研究のねらいと方法
 研究委員会よもやまゼミナールで議論されてきた内容について、薗田碩哉顧問より「福祉文化研究のねらいと方法」と題して報告があり、参加者で議論した。
 薗田報告では、福祉文化研究とは「福祉文化の研究」ではなく、「福祉の文化研究」であり、だからこそ「文化」についてきっちりと議論し、他の社会福祉研究と区別する必要があると主張する。そして文化をとらえる4つの見方を説明した。その見方とは@価値志向的な文化A客観志向の文化B芸術文化Cカルチュラルスタディーズの4つである。報告では、この4つの分類に基づき、研究誌『福祉文化研究』に掲載された論文等を分析、中でもB芸術文化の視点からみる福祉研究、Cカルチュラルスタディーズの視点から見る福祉研究こそが福祉文化学会の研究の方向性であり、他の福祉研究と異なる、学会独自の研究のあり方であると述べられた。
 議論では、4つの分類の関係性についての整理が必要との観点から、4つがどのような構造になっているのか考えた。そしてこの議論を深めることが、福祉文化研究のあり方を明確にし、現在個人に委ねられている福祉文化的視点の枠組みがみられることで、査読における「混乱」が収拾していくものと思われるとの意見が出された。また「文化の担い手は誰なのか?」との問いかけから、福祉領域の当事者や現場で働く人が、「文化的視座」を持つことが大切なことであり、それを妨げる要因について、考えていくことが重要であるとの意見が出された。
 今回の研究討論会での議論をふまえて、今年度の研究誌に論文が掲載される予定である。詳細については、そちらも参考にしていただきたい。また研究委員会主催の「よもやまゼミナール」でも、さらに議論を継続して行うので、興味のある方は参加していただきたい。



体験劇「はるなが池袋にやってきた」
 参加者からいただいた感想は、「素敵だった」「感動した」「圧倒された」というものばかりだった。
 体験劇は、2部構成。1部は、1970年代の障がい当事者の体を張った闘いの映像から始まった。病院併設入所施設の酷い実態、行政・職員への根強い不信感、施設退所と地域生活における苦難が描かれていた。地域生活には自由があり、地域で作り上げたネットワークが広がり、地域で生きることの素晴らしさ、日常を手に入れた時の喜びが描かれていた。
 2部は、このネットワークの中に飛び込んできたはるなさんの自立生活に向けた歩みが描かれていた。学校に馴染めず自主退学した彼女を支える人たちとの交流、重いしょうがいがあっても地域で生きることの大切さ、彼女を支える人たちとの交流、多くの人たちと共に作り上げた体験劇に、参加者たちは酔いしれた。自前の脚本、歌や踊り・パフォーマンス。1時間にわたって繰り広げられ体験劇は、福祉文化そのものであった。
  


パネルディスカッション 暮らしとしての福祉文化を問い直す
 新潟水俣病患者を40年余りにわたって支えている当地出身の旗野秀人さん。20年前に宝塚から丹波へと移り住み、丹波の地域おこしに活躍する能口秀一さん。岩手県・陸前高田の復興計画の一環として、障がい当事者も含めて障がい者福祉計画などの作成支援に当たっている東京住まいの河東田博さん。
 住む地域も活動内容もかかわる人々も異なる3人のお話は、ばらばらなようでいて、「暮らし」を軸に考えてみると、いくつもの共通キーワードが浮かび上がってきました。よそ者の目による暮らしの見つめ直し、大自然から一輪の花までの自然との共生の仕方、次世代へのつなぎ方、自分の立ち位置、人との距離の取り方、場づくり、当事者の声などなど。これらの言葉は、その地域ならではの実践方法が見つかった時、初めて生命が吹き込まれ、その積み重ねが暮らし文化となっていくのではないでしょうか。そこにこそ「生きていてよかった」と言える“豊かな暮らし”が誕生するのだと思えました。




第9回福祉文化実践学会賞を「社会福祉法人泰生会 総合ケアセンター泰生の里」が受賞!

 社会福祉法人泰生会が宇佐市と別府市において運営する総合ケアセンターでは、利用者の出番を作り、地域住民との「共生」を視野に入れた専門性のあるケアと共に、福祉を地域生活文化のあり様と捉え、地域住民を巻き込み、利用者の個を大切にし、夢や希望を紡ぎ、創造性豊かな、地域でのヒューマンな幸せづくりを目指す実践活動を続けてきたことが受賞の理由です。
 理事長の雨宮洋子氏は、「認知症の方を生活の場に戻したいと始めた活動を、このような形で評価していただきとてもうれしい」と喜びを語られました。
尚、学会賞賞金につきましては、全額、当学会にご寄付いただきました。心より御礼申し上げます。


 
 
第24回 日本福祉文化学会全国大会東京大会 
大会テーマ 『暮らしの中の 福祉文化を問い直す』
 日時:2013年9月28日(土)・29日(日)
 会場:立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区)
 日本福祉文化学会全国大会は、4年ぶりに東京にて開催されます。
 大会テーマは「暮らしの中の福祉文化を問い直す」。本当の意味で「豊かな暮らし」とは何なのか、そしてそのことから遠ざけられている人たちが 「豊かな暮らし」を取り戻すためにはどうしたらいいのかを考えます。

  ■東京大会開催パンフレット
  ■「福祉文化実践例」の募集
  ■研究発表募集要項 

 
 


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