日本福祉文化学会

第26回日本福祉文化学会全国大会(神戸大会)

   全国大会神戸大会が無事に終了
大会概要及び感謝の言葉 実行委員長:小坂享子

 10月24日(土)・25(日)の二日間、兵庫県立美術館および兵庫県福祉センターで、第26回全国大会神戸大会が、大会テーマを「地域文化から福祉をみる−大震災後20年の神戸から−」として開催された。このテーマは、20年前に手探り状態で始まった復興の軌跡を検証し、それを東日本大震災をはじめとする他の災害にも繋げようとの目的で設定された。
 講演やシンポジウムでは、様々な視点から20年の復興の軌跡が語られた。防災教育をテーマにした講演では、防災について、かえって子ども達から教えられたとの報告があった。つまり、災害があるから防災に取り組むというより、守りたい大切な人が地域にいてその人を守るための活動こそが防災であるということに防災教育を通じて気づかされたという報告であった。一方、シンポジウムでは、震災の経験を通して、我々は地域で助け合わなければならないということを知ったが、20年経って神戸の地域は変わったか、助け合いの文化は地域に根付いたかと考えると、残念ながら変わっているとは思えない、という意見が出された。また、指示待ちボランティアをこしらえてしまって、行政や社協の枠を超えていく主体的なボランティアが育っていないところに今のボランティアの課題がみられるという指摘がされた。我々は震災復興の教訓を今に活かし切れていないということが確認できたこと、そしてそこから今後の課題がみえたことが本大会の意義であったように思う。
 二日間を通して、特別講演、シンポジウム、「人と防災未来センター」見学、懇親会、総会、交流分科会、委員会企画、研究発表が行われ、すべて無事終了した。本学会の全国大会も四半世紀を超えて毎年開催され、歴史の重みを感じるようになってきた。その歴史のなかで、第26回としての神戸大会が一つのステージを担うことができ安堵の気持ちでいっぱいである。参加して下さった皆様、関係者の方々、本当にありがとうございました。

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特別講演「地域でつくるぼうさい文化」‐『ぼうさい甲子園』の取り組みから‐

地域のみんなと一緒に助かりたいという思いを行動に移すにあたって、住民主体で地域を巻き込んでの様々な取組みがあること、その意識の高まり、多くのアイディア、地道な努力の必要などについて、あの「釜石の奇跡」と呼ばれた成功経験、「ぼうさい甲子園」での取り組みなど様々な情報から多くの学びを頂いた講演であった。
講師であるNPO法人さくらネットの河田のどかさんは報告者と同じ歳(20代!)であるが、驚くほどしっかりとした説得的な語りであり、さくらネットの活動への強い思いと誇りが感じられた。地域において人と人が繋がっていくことで形成される「ぼうさい文化」はまさに「福祉文化」に通ずるものであると実感できる講演であった。
報告者:篠原拓也

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シンポジウム
コ−デイネーターの石田先生と、シンポジストの村井氏、中村氏は、ボランテイア活動を通じて震災以降ずっとお付き合いをされているとの事。あうんの呼吸と、関西人ならではの笑いと活気につつまれた、中身の濃いシンポジウムでした。
震災当時の神戸は本当に深刻な状況でしたが、自ら被災しながらも地域で活動され、地域住民の潜在力をぐんぐん引き出し、新たな絆を構築されたシンポジストのお話は、圧巻でした。震災の現場を、「地域がエンパワーメントされる場所」へと転換されたのだと感じました。石田先生の笑顔とお二人のお人柄がにじみ出た、暖かいムードの中で、これからの福祉実践のためのヒントを、たくさんいただきました。
報告者:北尾亜由子

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「人と防災未来センター」見学  

神戸大会のプログラムの一貫で久々に訪館する事が出来た。
私自身20年前西宮で被災をしたが1.17シアターでは地震破壊の恐ろしさを再び体感し、震災ホールでは神戸の街が復興に至るまでの映像を眺め、ふと涙が流れてしまった。震災経験のない会員にも貴重な体験となったと思う。
復興に至るまでの道程は長く苦しいものだ。だが神戸が震災から根気強く復興したプロセスこそ文化だと感じ、後世に広く伝える必要性を改めて感じた。
報告者:市田響

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第1交流分科会
〜地域が育つ 生きる力をつどい場が支えきる−とりもどしたあたりまえの最期−〜
     
丸尾多重子さんこと“まるちゃん”は、「つどい場」を、誰もが集え、しゃべる、泣ける、笑える、学べる、出かける等々まさに「生きる場」だという。
両親・兄を看取ったまるちゃんは「ヘルパー講座」の実習で、人を人とも思わない介護の場面に遭遇し、その怒りが「つどい場」誕生の源となった。
駅、市役所、社会福祉協議会に近い、そして家賃が安い、それが条件だった。活動は「つどい場」「おでかけタイ」「学びタイ」「見守りタイ」が柱である。分科会ではTV局が「つどい場さくらちゃん」の活動を収録したDVDを放映した。奇しくも生き切ることを支えた「つどい場」を目の当たりにした参加者は深い感銘を受け、「新しい看取りの姿」「地域、個々人が育つ大切さ」「本来の介護のあり方」等々、思いのたけをまるちゃんと共有した。「つどい場」「施設」「我が家」それぞれが「心安らぐ場」に創りあげるのは私達であることを学べる場となった。 

報告者:岡村ヒロ子


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第2交流分科会 「遊びとレクリエーションから見た福祉文化」

「遊びとレクリエーションから見た福祉文化〜地域を元気にする福祉レクリエーションムーブメント」をテーマに、日本のレクリエーションムーブメントを牽引し実践・研究を進めてきた石田易司氏とマーレー寛子氏を迎え、福祉レクリエーションの未来について参加者と共に考えた。
石田氏からは、1990年代に始めた地域ボランティア力を活かした認知症高齢者キャンプの事例や、オーストラリアの障がいがあっても余暇を楽しめる地域社会づくりの事例など、制度を超えた新しい試みの可能性がいっぱいのレクリエーションが、新しい福祉文化の大切なカギになると提言があった。
マーレー氏は、セラピューティックレクリエーションを学ぶため渡米し体験した障がい者・高齢者のキャンプからの学びや、「むべの里」の地域行政と連携した取組み事例から、介護保険制度の中で地域と共に展開できる可能性を模索しつつ、「楽しむことが出来る」ということの重要性を語った。
その後参加者からの感想や質問を聴き、活発な意見交換がなされた。

報告者:田島栄文


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第3交流分科会 「『ともに生きる』をつくり出す地域力 そのパワーの源と展開」

地域福祉活動のこれからは、専門性、協働性、世代交流など、支えられ、支え合う広範なネットワークが求められる。
この分科会では、多様な活動を住民、専門家、NPOなど、広範なネットワークで展開する地域活動の仕掛けを学びました。
 地域力の創造とは何がポイントか、そのパワーの源はどこにあり、どの様に展開していけばよいのか・・・現場の声を共有したいと思います。
パネラー: 岸和田市 「リビング ほしがおか」 代表 原口正彰 さん
         東住吉区 NPO法人「ハートフレンド」 代表理事 徳谷章子 さん
コーディネーター: 大阪府社会福祉協議会 地域福祉部長 片岡哲司 さん
全体進行: 関西社協コミュニティワーカー協会 会長 橋俊行さん(寝屋川市社会福祉協議会)


報告@: リビング ほしがおか 
「一人を大切に、安心とふれあの町づくり 〜顔の見える福祉活動の実践〜」
平成20年、大阪府の福祉事業「ふれあいハウジング」から、「リビングほしがおか」を設立。地域
福祉活動の拠点として町会、町会各種団体と相互に連携を図り、自助・共助・公助による地域協働型福祉活動の充実発展を進める。
活動内容:
高齢者の買い物を支援する「朝市ほしがおか」の開催(2008年6月〜、毎日曜)、「ふれあい喫
茶」〜いきいきサロン〜の開催(週4回)、老人クラブのさまざまな趣味の会、作品展、ふれあい訪問〜小地域ネットワーク活動〜、いきいき相談広場(毎月第2水曜)、カラオケ広場(毎日曜)、折り紙教室(毎月第2日曜)、なごみ体操、美化大作戦、七夕笹飾り、お助けネット・スターポイント「わくわくチケット」、防災講座、災害時要援護者登録「あんしんカード」、災害対策委員会のキャッチフレーズ「『いざ』よりも『日々』が大切 防災は自助と共助の心から」。2014年「第40回産経市民の社会福祉賞」受賞

報告A: NPO法人「ハートフレンド」
    「地域総がかりの子育てを 子どもが主人公の居場所づくり」
地域の小学校側面の仮設消防署の移転に伴い、その建物を子ども達の活動拠点として大阪
市に要望。2003年「桑津こどもの家 ハートフレンド」開設。図書寄贈、備品は地域住民の寄付。2006年法人化。2013年、新拠点(民家の改修)に移転。「乳幼児親子から高齢者までがつながる福祉の拠点づくり」を推進。2007年度「第1回 よみうり子育て応援団大賞」受賞、2010年度 子ども若者育成・子育て支援功労者表彰「内閣府特命担当大臣賞」受賞
活動内容:
 「こどものてらこや」(月曜〜金曜・午後4時〜6時、小学1〜6年生)、「あそびスクール(不登
校の子どもの居場所)」(月曜午後6時半〜7時半)、清掃・探検クラブ、ジュニア・リーダークラブ、文化部、4つのひろば(ハート広場、ふれんど広場、龍華おやこのひろば、平野おやこの広場=行政の地域子育て支援拠点事業受託)、地域で子育て(夜間あずかり、子育てフォーラムの開催)、「おとなのてらこや」(認知症防止・介護予防)、東住吉区キャッチ&フォロー事業(発達障がいがある子どもの早期発見・早期療育)、児童発達支援等ディサービス(平成24年度2月1日〜)。

 全体を通して:
 リビングほしがおかは、団地の自治会をベースとした活動で、ハートフレンドは、NPO法人としての活動展開です。しかし、共通する2つの側面があります。一つは、両者とも広範な地域組織とのネットワークを大切にし、社会資源を縦横無尽に駆使しておられること。もう一つは、事業の一つずつは、どちらかといえば先駆的な事業ではないが、さまざまな事業を多角的に展開しているということ。この二つが大きなパワーの源となっているといえる。
ネットワークの広さは、多様な社会資源と結びつき、1+1は2には収まらないというよく言われる言辞ではあるが、実行することは容易なことではない。また多彩な事業の展開は、多様な住民を包括しているということにつながる。一人ひとりのニーズに合わせた対応ができるということは、一人ひとりが安心して生活できるということである。その展開のパワーは大切なことだが、さらに利用者のパワーをつくり出すことにつながる。まさに「生きる力を育くむ」ということである。
広範なネットワークも、多彩な事業展開も人と人のつながりが動脈である。まさにともに生きるをつくり出しているのである。それが地域の力として、陸続と人の流れを生み出している。人がつながりはじめるという起動は決してたやすいことではないが、お二人の報告者は、それを営々と実践してこられた。一人の信じる力が、多くの住民に伝播して、今日の安心して住める地域となっている。一人のパワーと、伝播していくパワー、そして展開し続ける持続力。その方程式を鑑みる交流分科会であった。

報告者:脇坂博史

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第4交流分科会 「災害と福祉文化」―1.17あの日から始まったこと
 20年目の1.17を間近にした神戸。あの日から今日までの阪神間の出来事を、3人のパネラーに語ってもらった。
保育園園長の池川正也さんは、市役所近くの保育所での公務員の保護者の動きを中心に子どもの暮らしを、養護学校の教員だった福井喜章さんは、災害時の障がい児たちの困難とその後の特別支援教育を、当時災害ボランティア支援団体のスタッフで現在大学職員の益田博さんからは、緊急時の災害ボランティアの活動と大学ができる災害支援の可能性を語っていただいた。
表面的には短期間で成し遂げられたように見える神戸の復興と多様な住民の幸せが必ずしも一致していないという話が印象的だった。

報告者:藤原一秀

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第5交流分科会・委員会企画
「地域で子どもを育むということ」

パネリストに朱まり子氏(子育ての文化研究所代表・NPO法人山科醍醐こどものひろば元理事長)を迎え、その活動の報告を中心に、地域での子育てをめぐる現状について意見や情報を交わしました。
伝統的な子育ての文化の良いところを、現代の社会のなかで子育て中の世代にどのように伝えていけばよいのか、また、子育て支援に携わる者に必要な配慮とは何かなど、実例に基づいた説明を聞き、考えを深めることができました。参加者は少なかったのですが、その分、オープンな話し合いができ有意義な時間を持つことができたのではないかと思います。         

報告者:川北典子


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特別講演2
「あの時高校生だった私が落語家に そして一席」
 阪神淡路大震災当時、高校生だった落語家の桂福丸さんが、東灘区の自宅で経験した地震の瞬間やその直後のこと、数週間過ごした避難所の様子などをお話しくださった。
 つらい避難生活の中で、妹さんの笑顔に救われたという経験から、「笑顔の大切さを伝えたい」と落語家になられた福丸さん。
 被害の程度によってのいざこざ、大きな被災を免れたものの、避難所や遺体安置所にもなった母校のこと、大人たちの行動や対応の様子を見て感じたことなど、実体験に基づいたお話は心に響き、災害の中での他人とのかかわり方や、自分のあり方などについて考えさせられた。 なお、「一席」のお題は「時うどん」であった。

報告者:大江緑

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研究発表一覧
研究発表者と発表題目を下記PDFにて掲載します。
taikai_kobe_kenkyuuhappyou_ALL.pdf へのリンク
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「沖縄福祉文化を考える会」に―「福祉文化実践賞」授与式―

「福祉文化実践学会賞」の推薦は3件ありました。慎重審議の結果、「沖縄福祉文化を考える会」に決定しました。推薦理由は以下の通りです。
*「沖縄福祉文化を考える会」の25年間の活動経過
「沖縄福祉文化を考える会」は1991年、福祉事業や文化活動に関わる10名の会員ではじまりました。会則によると「@沖縄における福祉文化を考えるとともに、福祉文化について研究し、実践活動を進める、A日本福祉文化学会との連携を密にし、同会の主催する事業に積極的に参加する」ことを目的としています。10人程度で出発し、毎月第3土曜日を定例活動日とし、年間計画のもとづき各種の学習・実践活動を25年間も継続してきました。
活動の視点は「福祉と平和」におかれてきたといいます。沖縄は第二次大戦時、日本国土で唯一の地上戦を体験し、かつそれは非戦闘員である民間の女性や子どもまで狩り出され戦闘になり、何万人もの民間人が犠牲になるという想像を絶する体験をもち、未だに遺骨がみつからない方もいるからです。
日常の取組みを振り返ると、介護老人福祉施設や身体障害者施設の訪問・交流、ボランティア活動、健康づくりで薬草園訪問、国頭村森のおもちゃ美術館訪問、反戦歌「さとうきび畑」歌碑訪問、戦争体験者の話を聞く会等です。他に、琉球文化がどう根づいたかを、島ことば、わらべ歌で考える勉強会、車社会がもたらす公害問題、高齢者・障害者の移動手段の確保問題、沖縄戦で壊滅した軽便鉄道の復活、路面電車や新交通システムの提案などの取り組みも行ってきました。
さらに日本福祉文化学会との連携では、「平和の礎」が建立された1995年に現場セミナー、2001年も「長寿社会を支えるもの」と題し地元の歴史家、郷土
料理研究家を招いた現場セミナーを開催しました。
*25年間の取組の特徴
「沖縄福祉文化を考える会」の25年におよぶ活動の特徴は、沖縄の長い歴史を視野に入れ地域生活の視点から、日常の暮らしに根差した福祉問題や生活課題を取り上げて取り組んできた点にあると思われます。比較的小回りのきく規模での自主活動で、25年も継続されました。これを可能とした理由は地域の歴史をふまえ生活の要望と課題をとりあげて実践し、研究し、提案する自主的な交流であったたからだと思います。
「沖縄福祉文化を考える会」のこの取り組みは、これからの福祉文化の領域における活動や研究を進めるうえで有益なヒントを含むと思われます。以上の理由で2015年度の福祉文化実践賞を授与することを決定しました。なお授与式は神戸大会2日目に行われました。                    

報告者:「福祉文化実践学会賞」選考委員会委員長 永山 誠



 
   日本福祉文化学会理事・評議員の皆様ならびに学会員の皆様

  神戸大会は、9月30日(水)で大会申込みが一旦、締め切られました。
 当日申込みも受付ますが、 10月16日(金)まで申し込みを延長し皆様を
 お待ちしております。よろしくお願い致します。

  尚、神戸のホテルの予約が難しい場合は、大阪、明石などをお考え下さい。
 それぞれ30分以内で神戸に到着致します。

 では、皆様と神戸でお会いできることを楽しみにしております。

                        神戸大会実行委員長の 小坂享子
 
 
 
  第26回日本福祉文化学会全国大会(神戸大会)のご案内
大会テーマ 地域文化から福祉をみる −大震災後20年の神戸から−

期日:2015年10月24日(土)25日(日)
会場:兵庫県立美術館、人と防災未来センター 他

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■要項 
■大会参加申込書 
■自由研究発表申込書 
■自由研究発表レジュメ様式

■開催チラシ(PDFファイル)


 


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