日本福祉文化学会

第27回日本福祉文化学会東京大会



  第27回日本福祉文化学会全国大会東京大会報告
『東京大会を終えて』 大会実行員長:月田みづえ

 第27回日本福祉文化学会全国大会東京大会を多様化する“家族”がひらく未来―ふくし・文化・地域の視点から―をテーマに平成28年10月22日(土)と23日(日)、東京立正短期大学で開催した。天候に恵まれ、老いも若きも大勢が集う、学びの秋にふさわしい、2日間となった。
 東京都杉並区の妙法寺の参道につながる閑静な住宅地にある会場は、歴史の重みを感じる講堂での講演を含め、わきあいあいと楽しんで学ぶ人々の歓喜にあふれていた。
 大会1日目のオプショナルツアー『有吉佐和子と杉並区堀ノ内』では、学芸員の西方ゆり恵氏の案内で、有吉文学が生まれた背景に触れる体験をした。佐和子は、この地を舞台に『恍惚の人』を描いたという。
 大会開始、会長、大会実行委員長あいさつに続き、飯田俊明氏のピアノソロ演奏で開幕。参加者が選んだ音で、即興の曲を奏でるエキサイティングな内容であった。午後の5つの交流分科会では、子どもの居場所や育つ地域文化の創造、異世代交流、造形遊びワークショップ、戦中・戦後の家族と福祉文化など熱い議論が時を忘れて続いた。懇親会は、近くのピザレストランで、区内の障害者施設職員のバンド演奏で盛り上がるなか、全国からの会員や翌日報告する韓国の招聘者などが交流のひと時を過ごした。





 2日目は、会員総会の後、3つの部会(子どもの福祉と文化、地域における福祉と文化、障がい者・患者を取り巻く文化)で、学会ならではの研究課題が提起され、学びを深めた。一方、研究委員会企画:福祉文化研究への招待(ワークショップ)では、学会の研究・実践を発展・リードする議論が展開された。
 午後の演奏プログラムでは、あまり知られていないヴィヴァルディの孤児院における福祉・教育・文化実践を学び、古楽器による演奏で心があらわれた。大森美香氏による特別講演:家族にとっての幸せ―NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」脚本執筆を通して見えてきたこと―では、作品を作るなかで家族のあり方を問い、ひとり一人が特性を生かしていきいきと生きていくために大事なことが語られ、聴衆の感動をさそった。シンポジウム:多様化する“家族“がひらく未来―”ふつう“ってなに?は、弁護士・母子生活支援施設長・行政書士のパネリストが性的マイノリティーなど多様な家族も増え、誰もが生きやすい社会への提案をした。心身ともに刺激的な2日間であった。

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福祉文化実践学会賞「加藤美枝氏」が受賞 選考委員会委員長 永山 誠

 加藤氏は40歳代の民生児童委員活動に始まり、介護保険制度発足前後に世田谷区保健福祉審議会区民委員等を歴任、98年の第2回日韓福祉文化国際会議の世田谷開催の実行委員長を務めた。
その間世田谷区老人大学(現生涯大学)の講師を20年間務め、退任後は修了生と共に「高齢者の力を子育ちに、子どもの力を高齢者の生きがいに」をモットーに「ひこばえ広場」や老老ケアと異世代交流を目指す住民主体型地域デイ「たまご=他孫の家」を組織、先駆的にコミュニティ活動を展開している。



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第1交流分科会「子どもをとりまく諸問題と居場所づくり」
 
報告:川北典子

話題提供者から、商店会による地域の活性化、子ども食堂を始めとする地域での子ども・子育て支援活動、東京および気仙沼での冒険遊び場を核とした子どもの居場所づくりについて、実践的な報告を伺いました。
その後、参加者を交えての質疑応答・意見交換等を行いましたが、参加者の活動分野もさまざまで、話題は現代の子どもをめぐる社会環境・地域環境、親子関係、福祉的ニーズなど多岐にわたりました。
現代の子どもをとりまく状況は深刻ですが、一人ひとりの住民が少しの気づきを得ることで、支援の輪を広げていけるのではないかと確認し、有意義な情報交換の場となりました。



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第2交流分科会「子どもが育つ地域環境」
 報告:前嶋元

 杉並区立こども発達センター所長 村一浩氏からは、「センターにおける子育て支援の一環としての発達支援、公・民・学が協力した地域発達支援体制について」、杉並区立西荻南児童館館長 戸澤正行氏からは、「20年前より区内のすべての児童館で実施してきた『地域子育てネットワーク事業』という地域ぐるみの子育て環境づくりについて」、荒川区スクールソーシャルワーカー山田恵子氏からは、「ワーカーとしての活動を通して見えてきたスクールソーシャルワークと子育て環境づくりとの深いつながり、実践を整理していく意義について」お話いただいた。
 その後、すべての参加者から意見をいただき、多様な視点と共通基盤の確認ができたように感じる。



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第3交流分科会 「異世代交流とこれからのコミュニティづくり」報告:加藤 美枝

はじめに絵本『ピースブック』(トッド・パール作//童心社)を映し「へいわってなあに」のリズムと色彩をめでつつ、初代会長の「平和なくして福祉なし」に熱い思いを馳せた。
世田谷区は本年度から介護予防・日常生活支援総合事業の1つとして住民主体型のデイサービスを始めた。
その1つ「たまご(他孫)の家」の実践報告があり、休憩の後、参加の方々と意見交換を行った。
参加者は大学関係者、県社協の方、施設勤務の方、高齢者総合相談の方、地域交流サロンを始めた理学療法士、病院勤務から福祉機関の仕事に転じた理学療法士、事業準備中の鍼灸師でカウンセラーの7名。
たまごの家からは事例報告者の応援にデイ利用者の91歳になる男性ほか6名が参加した。



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第4交流分科会 造形遊びワークショップ「親子でともに遊べる場づくり」 報告:薗田碩哉

 このワークショップは造形遊びの指導者・矢生秀仁氏(子ども環境デザイン研究所)が、地域の親子を集めた造形遊びの場を楽しく展開する場面に、学会参加者が参加してその様子を観察シートに記入し、それを踏まえて意見交換をするという組み立てだった。
 子どもたちはどの子も画用紙や段ボールの小片や紙コップなどの素材にあっという間に飛びつき、思い思いのモノづくりを始めた。
 他方親たちはさまざまで、黙って見守る親、子どものやりたいことを援助する親、子どもと一緒に作る親もいた。
意見交換では、造形遊びが持っている「自分を見つける」力を改めて認識し、親や指導者は子どもに教えるというスタンスではなく、形づくりを通して子どもとコミュニケーションを図ること―それも言葉を介してではなく、モノや動作を通じて伝え合う―の重要性を確認した。



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第5交流分科会「戦争をとおして戦中・戦後の家族と福祉文化を考える」報告:結城俊哉

 本分科会では、立教大学の浅井春夫先生を話題提供者としてお招きし、「沖縄戦」と呼ばれる人災であり反(非)福祉的行為である「戦争」が家族にもたらした悲劇として、戦争孤児たちの戦後の社会的処遇の問題点をはじめ、戦時中、国家の為の兵士養成の「男らしさ」をめぐるジェンダー論、さらに、近年、日本の社会状況における子ども・若者の貧困と経済的徴兵制への危惧について貴重なお話を伺うことができました。
 戦後71年目の今年、日本が抱える象徴的な社会問題として戦争と福祉文化を考える契機となる警鐘を鳴らして頂くことができたとても有意義な交流分科会でした。



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研究委員会ワークショップ「文化の眼鏡で作るフレームワ-ク」 報告:薗田碩哉

 福祉文化研究とは、福祉現場を文化の眼鏡で見直し、課題を発見して、その解決を目指すこと、という考え方を土台に、研究プラン作りに挑戦した。
 はじめに薗田碩哉(学会顧問)が、福祉文化研究は「福祉文化の研究」ではなく「福祉の文化研究」だという総論を述べ、ついで「対象」「活動の場」「文化の視点」の3つの切り口で意見交換をした。
「対象」では、高齢者/幼児・子ども/マイノリティ/障害者の4つのコーナーが作られ、参加者はそのどれかを選んで集まり、意見交換。「場」では学校・職場/施設/地域/家庭、「視点」では、理想の文化/文化的特色/遊びとアート/文化批判のそれぞれ4つのコーナーが設けられた。
 参加者はコーナー選びをもとに自分の「研究ストーリー」を考えて発表し合った。希望者には研究委員会が今後もアドバイスを続けることが伝えられた。



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特別講演
「家族にとっての幸せ-NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」脚本執筆を通して見えてきたこと-」

報告:中島 智

 脚本家・演出家の大森美香氏による講演では、脚本家の仕事について紹介があった後、「あさが来た」が出来るまでのエピソードを脚本の現物を示してお話いただいた。
実業家で日本初の女子大学設立に尽力した広岡浅子をモデルに、夫婦や姉妹といった家族の姿を通して、あさの物語が描かれた。
 理想の家族像を求めるよりも、各人各様の生き方を見つけることを提案され、講演は終了した。
脚本執筆を終えて、旦那と娘の支えに感謝したい、とのことばに、参加した東京立正短期大学の学生たちは、「相手を思いやることが大事だと思った」「小さいことを見逃さずに「ありがとう」と言いたい」といった感想を寄せていた。
作品にもご自身の生き方にも「支え合う家族」を紡いでいこうとする大森氏の思いに、参加者は大きな感銘を受けていた。



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シンポジウム 報告:阿比留久美

 シンポジウムでは、弁護士の志摩勇さんからは親族による高齢者の財産の囲い込み(経済的虐待)の現状、母子生活支援施設施設長の森菊世さんからは施設で暮らす母子の事例の紹介と現状、ゲイ当事者で行政書士の永易至文さんからはLGBTが直面する「暮らし・お金・老後」の問題に対応する制度設計についてお話いただいた。
 異なる職種・分野の方のお話であったが、既存の「家族」枠組みのもつ限界が通底しており、「家族」以外の制度を活用した生活の立て直しや生活設計の可能性も示された。
 ライフスタイルや家族のかたちが多様化する中での新たな「家族」のかたちも提示され、シンポジウムタイトルにふさわしい充実した議論がなされた。



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2016年度日本福祉文化学会会員総会 報告:前嶋元

 10月23日(日)午前、東京大会会場である東京立正短期大学において標記総会が開催された。
協議事項として「2015年度事業報告」「2015年度収支決算書及び監査報告」「2017年度事業方針(案)」「2017年度予算書(案)」を審議し、原案で可決された。
 報告事項として「2016年度 第12回 福祉文化実践学会賞の選考結果について」「2016年度前期事業報告と後期事業予定」「2016年度 予算執行見込み」「会員状況に関する報告」「2016年度第28回大会について」が行われた。
多くの会員の方々にご出席いただき、ありがとうございました。


 
 
  第27回日本福祉文化学会全国大会東京大会(東京立正短期大学)

多様化する“家族”がひらく未来 -ふくし・文化・地域の視点から-

開催日:2016年10月22(土)・23(日)
会場 :東京立正短期大学


第一日目 平成 28 年 10 月 22 日(土)
10:00~12:00 【オプショナルツアー】
   「有吉佐和子と杉並区堀ノ内」(東京立正短期大学 正門前集合)
13:00 受付
13:30 【オープニングセレモニー】
    ・学会長挨拶 馬場 清
    ・大会長挨拶 月田 みづえ
14:00~14:15 休憩・移動
14:15~17:00 【交流分科会】
    ①子どもをとりまく諸問題と居場所づくり(地域文化の創造)
    ②子どもが育つ地域環境(研究と実践の融合)
    ③異世代交流とこれからのコミュニティーづくり
    ④造形遊びワークショップ-「親子でともに遊べる場づくり」
    ⑤戦争をとおして戦中・戦後の家族と福祉文化を考える
17:30~19:00 交流会

第二日目 平成 28 年 10 月 23 日(日)
9:00~ 9:50 会員総会
10:00~11:50 【研究発表】
         【研究委員会企画】文化の眼鏡で作るフレームワーク:
         福祉文化研究への招待(ワークショップ)
11:50~12:40 休憩
12:40~13:20【演奏プログラム】ヴィヴァルディと福祉・文化
13:20~13:30 休憩
13:30~14:30【特別講演】東京立正短期大学 50 周年記念公開講座
     ・主催者挨拶 東京立正短期大学学長 工藤 教和
     ・講演:家族にとっての幸せ―NHK 朝の連続テレビ小説「あさが来た」
      脚本執筆を通して見えてきたこと― 脚本家 大森美香
14:30~14:40 休憩
14:40~16:40【シンポジウム】多様化する“家族”がひらく未来
16:40~16:45 休憩
16:45~17:00 【クロージングセレモニー】(福祉文化学会実践賞表彰含む)

主催 :日本福祉文化学会 共催:東京立正短期大学
後援 :杉並区、杉並区教育委員会、杉並区社会福祉協議会、妙法寺門前通り商店会
2016日本福祉文化学会東京大会第二次チラシ

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東京大会の他金融機関からの口座番号に誤り(1ケタ多い)がございましたこと、お詫び申し上げます。
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また、それにともない、事前申込も延期いたします。

【事前申込締切】2016年10月11日(火)
【入金締め切り】2016年10月14日(金)
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名義 : 日本福祉文化学会 記号 10100 番号 51821721

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名義 : 日本福祉文化学会
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※懇親会参加費は4,500円です。送付パンフレット申込書の金額4,000円は誤っておりますのでご注意願います。

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2016日本福祉文化学会東京大会自由研究発表様式 
 研究発表申込締切:9月11日(日)
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  日本福祉文化学会東京大会事務局(担当:前嶋)
   メール:fbt_2016@yahoo.co.jp Fax : 029-896-9389


 
 

 


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